2013年1月3日木曜日

期待リターンとリスクおよび相関係数

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アセットアロケーションの現代ポートフォリオ理論(MPT)に基づく分析には、資産の期待リターンとリスク、および価格変動の相関係数の推計値が必要である。「アセットアロケーションを分析してみる」で、「長期投資予想/アセットアロケーション分析」で用いている推計値が適切でないことを説明した。今回はより適切な推計値を紹介する。

前回示したGPIFによる推計値の問題点は大きくわけると二つある。一つは30年以上の長期のデータをもとに算出しているため、近年の傾向とかなり異なることだ。国内債券の5.40%という大きすぎるリスクにそれが表れている。もう一つは期待リターンにリスクフリーレート(無リスク資産の金利)の推計値を含めていることだ。

一般にリスク資産の期待リターンは、リスクフリーレートにリスクプレミアム(リスクの見返りの収益)を加えて求める。GPIFの期待リターンにはリスクフリーレートとして、実質短期金利推計値1.0%とCPI推計値1.0%の両方が含まれている。そのため、どちらもほぼゼロかマイナスの今を生きている我々の実感と合わない期待リターンになっている。

ニッセイ基礎研究所基礎研REPORTの2011年10月号の「下方リスクを重視した年金資産配分」には、2001年4月~2011年3月のデータを基にしたリスクフプレミアムのみの推計値が載っている。下方リスクモデルによる分析のために推計されたものだが、MPTの平均分散モデルによる分析にも利用できる。ニッセイ基礎研究所は資産運用のプロのためにレポートやコラムを多数公開している。個人投資家にも有用なものが多いのでぜひ参考にしてほしい。
ニッセイ基礎研究所による推計値
期待リターンとリスク
期待リターンリスク
国内債券1.50%2.01%
国内株式5.00%18.14%
外国債券2.50%9.96%
外国株式5.00%20.46%
相関係数
国内債券国内株式外国債券外国株式
国内債券1.00
国内株式-0.311.00%
外国債券0.060.33%1.00%
外国株式-0.16%0.69%0.53%1.00%
この期待リターンはリスクプレミアムだけなので、インフレでリスクフリーレートが上がればリターンはその分上積みされる。この推計の対象の10年間に実際に資産運用を行っていた私にとって、まったく違和感のない推計値となっている。ほかの個人投資家にとってもそうだと思う。この推計値を基に効率的フロンティア上のアセットアロケーションを求める方法を「アセットアロケーションの最適化」で説明する。

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